ヴィンテージカー部品の再生

自動車の修理やレストアにおいて、希少な部品や生産終了した部品の調達は大きな課題です。

この難題に対し、個人事業主のシェーン・ドレイク氏は独創的な解決策を見出しました。彼はメイン州にある自宅の農場を拠点に、メーカーのサポートが終了した旧型日本車向けの部品を復元・製造するビジネスを展開し、成功を収めています。

「純正部品は時間の経過とともに紛失・破損し、供給が需要に追いつかなくなります」
「私は基本的に手作業で部品を作り直します。 より頑丈な素材を追加したり、固定方法を再考したり、クリップを再設計したり、仕上げを変えたりと、自分なりの工夫を加えています」

とシェーン氏は語ります。

クルマへの情熱が生業になるまで

シェーン氏の自動車に対する情熱は、高校時代にまで遡ります。当時は自動車技術のプログラムに没頭し、革新的な車両を自ら設計することを夢見ていました。その後、ディーラーの技術者として経験を積みますが、より自由な創造性を求めて別の道を模索し始めます。

軍での勤務を経て、彼は自動車愛好家にとっての聖地である日本へ移住しました。ここが起業の大きなきっかけとなります。日本滞在中、彼はこれまでの経験を活かして数台のカスタムカーを製作。それらは複数の自動車雑誌で特集されるほどの注目を集めました。

当時のことをシェーン氏はこう振り返ります。

「軍での仕事には複雑な思いもありました。冒険は好きでしたが、家族がいるなかで、常に自分の情熱を注げる場所を探していたのです。それがこの仕事でした。ようやく、本当にやりたかった『車の整備や製作』に心ゆくまで打ち込める機会を得たのです」

3Dプリント技術がビジネスの鍵に

2017年、シェーン氏はジュエリー業界で培った3Dプリントの知識を武器に、ビジネスを立ち上げました。この技術が自動車製造に活用できると確信した彼は、当時最高峰とされていた3Dプリンター「Raise3D」をアメリカから導入します。

彼はこのプリンターを使い、ヴィンテージ日本車の内装部品を再生産し始めました。目指したのは、純正部品（OEM）を凌駕する品質です。

「Raise3Dのプリンターは、私のビジネスの基盤であり、血肉そのものです。導入を検討していた際、他の製品とは一線を画すプロ向けの性能だと直感しました」

シェーン氏は、3Dプリンターによって精密かつ高強度な部品を再現することに成功しました。物流の制約があるなかでも、ノズルの大型化や積層の最適化といった高度な設定を使いこなし、スピードと品質を両立させています。

しかし、彼の強みは技術だけではありません。機械だけに頼らず、一つひとつのパーツに丁寧な研磨や再塗装を施す「職人のこだわり」が、製品にさらなる価値を与えています。多くのメーカーが効率を重視するなか、彼は純正品の美学と性能に完璧に合致する、最高級の質感を提供し続けています。

カーボンファイバー複合材の活用と進化

素材選びにおいても、強度・価格・顧客の好みのバランスを徹底しています。主力のABS樹脂に加え、軽量でスポーティなカーボンファイバー複合材も採用。これにより、オーナーは愛車の美観を損なうことなく、モダンなテイストを取り入れたカスタマイズを楽しめるようになりました。

この「最新技術と職人技の融合」は、純正部品の基準を超える高品質なパーツ供給を可能にしました。複雑なデザインの再現や多様な素材の選択肢により、ヴィンテージカー愛好家たちは、かつての輝きを愛車に取り戻すことができるのです。

成長を続けるビジネスの展望

シェーン氏のたゆまぬ努力により、ビジネスは毎年約20％の着実な成長を遂げています。一方で、手作業による仕上げ工程の負担など、増え続ける需要への対応が課題となっています。今後は生産効率を高めるため、自動化の導入も検討中です。

将来的には、より高速・高精度な「Pro3」や、カーボンファイバー印刷に特化した「E2CF」モデルへのアップグレードも視野に入れています。彼にとって3Dプリンターの信頼性は不可欠であり、自宅に隣接する作業場で24時間365日フル稼働させられる安定性を高く評価しています。

「Raise3Dは本当に素晴らしい。間違いなく、他のどの3Dプリンターよりも優れています」と彼は太鼓判を押します。

自動車への情熱と3Dプリントの専門知識を掛け合わせ、メーカーが作らなくなった部品を供給する。シェーン・ドレイク氏のビジネスは、まさにヴィンテージカー業界の空白を埋める存在となりました。事業がどれほど拡大しても、「最高の修復体験を顧客に届ける」という彼の情熱が揺らぐことはありません。

Raise3D Pro3 HSシリーズについて

MEX/FFF方式（材料押出方式）3Dプリンター。安定性と繰り返し精度に優れた、Raise3Dのフラッグシップモデルです。300x300x300mm（Plusは300x300x600mm）の大きな造形サイズで高速造形を実現し、繊維強化樹脂を含む40種類以上のフィラメント（材料）に対応します。

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