株式会社金沢エンジニアリングシステムズ様:ソフトウェア開発企業が挑む、伝統工芸と先端技術の融合。Raise3Dが拓いた「自分たちの欲しいモノをつくる」未来のコピー
石川県金沢市に本社を構える、株式会社金沢エンジニアリングシステムズ様。1988年の創業以来、組込みソフトウェアの受託開発を主力事業としながら、近年ではIoTソリューションや環境エネルギー事業、さらには自社製品開発へと、その領域を意欲的に拡大している技術者集団です。
ソフトウェア開発のエキスパートである彼らが、ハードウェアという新たな挑戦の扉を開くために選んだツールが、Raise3Dの3Dプリンターでした。
ソフトウェア企業の「ハードが作れない」という課題から、いかにして3Dプリンターを導入し、伝統工芸と先端技術を融合させた革新的な漆器『IKUEタンブラー』や、プロフェッショナル向け分割式キーボード『Waffree』を生み出すに至ったのか。その開発秘話と、社内に根付く独自の「ものづくり文化」について、開発担当者の皆様に詳しくお話を伺いました。
金沢エンジニアリングシステムズ
執行役員 自社製品開発部 部長 大丸様(写真左)
第四開発部 部長 兼 情報システム部 部長 荒井様(写真右)
自社製品開発部 主任技師 宮城様(写真左) 自社製品開発部 次長 橋本様(写真右)
第一章:課題 - ソフトウェア企業の壁と、ものづくりへの渇望
────まず、御社の設立から現在に至るまでの経緯と、自社製品開発を始められたきっかけについてお教えいただけますでしょうか。
金沢エンジニアリングシステムズ様: はい。弊社は元々、組み込みソフトウェアの受託開発を主たる事業とする会社として設立されました。現在でも事業比率としては受託開発が95%を占めております。しかし、以前から「自分たちの手で、世に送り出す自社製品を持ちたい」という思いがあり、会社の規模が大きくなってきた近年、具体的な取り組みとして新しい部門が立ち上がりました。それがおおよそ2〜3年前のことで、自社製品開発の本格的なスタート地点となります。
────ソフトウェア開発がご専門の中で、自社製品、特にハードウェアを含む製品開発にはご苦労もあったのではないでしょうか。
金沢エンジニアリングシステムズ様: まさにその通りで、ソフトウェアは自社でいくらでも開発できる一方、ハードウェアを製造する手段がないという課題に直面しました。アイデアはあっても、形にできない。そんなジレンマを抱えていました。ちょうどその頃、コンシューマー向けの3Dプリンターが普及し始めており、私たちはまず4〜5万円ほどの安価な機種を導入しました。基板の筐体などを試作していましたが、造形サイズが小さいという壁に突き当たり、より大きなモデルの導入を検討することになったのです。
────そこでRaise3Dのプリンターを選ばれたのですね。
金沢エンジニアリングシステムズ様: はい。ものづくりに詳しい知人に相談したところ、当時からRaise3D社の製品が良いという評判を聞き、Pro2を導入するに至りました。
第二章:選択 - なぜRaise3Dだったのか? 最終製品を託せる「信頼性」
社内での実用性を重視して作られた不快指数モニターの筐体など、様々な用途でFFF3Dプリンターを
活用いただいている
Raise3D Pro2の導入により、それまで扱っていたPLA樹脂だけでなく、カーボンファイバーを配合したPET-CFやABSといった、より高強度で実用的な材料での造形が可能になりました。ものづくりの可能性が、まさに飛躍的に広がった瞬間でした。
現在、同社ではPro2に加えて後継機であるRaise3D Pro3も導入し、2台体制で日々フル稼働しているといいます。
────最近は高速性を謳う機種も多いですが、その中でRaise3Dを継続してお使いいただいている理由は何でしょうか?
金沢エンジニアリングシステムズ様: 一言で言えば、その卓越した耐久性とメンテナンスのしやすさです。特に、庫内温度が高温になるような環境で、何十時間、時には何日も連続で稼働させても問題なく動き続ける安定性は、最終製品の製造を任せる上で欠かせない『信頼性』に直結します。
実際に、Pro2は導入から4〜5年が経過した今でも、全く遜色のない美しい造形品質を維持しているといいます。最新の高速機も魅力的ではありますが、情報が少なくトラブルシューティングが難しい「人柱」になるリスクもあります。その点、Raise3Dは世界中に豊富なユーザーコミュニティが存在し、安定運用のための情報が手に入りやすいです。長期的な視点で見たとき、この実績に裏打ちされた信頼性が、彼らにとっては何物にも代えがたい価値でした。
第三章:飛躍 - Raise3Dが可能にした、アイデアの具現化
Raise3Dという信頼できる製造ツールを手に入れたことで、金沢エンジニアリングシステムズ様のアイデアは、堰を切ったように形になり始めました。
効果1:革新的な製品『IKUEタンブラー』- 伝統と技術の邂逅
IKUEタンブラーの漆の質感美しい底面デザイン
────御社の3Dプリンター活用を象徴する『IKUEタンブラー』は非常にユニークな製品ですが、どのような経緯で開発が始まったのでしょうか?
金沢エンジニアリングシステムズ様: この製品は、縛りのない自由な発想で新規事業を興すという、社内のワーキンググループから生まれました。当初は「金沢らしい伝統工芸を活かして、インバウンド観光客に受けるような製品は作れないか」という発想からスタートしました。3Dプリンターなら金型も不要ですし、尖ったデザインの器に金箔や漆を施せば面白いものができるのでは、と。最初は、機能性よりもデザイン性を重視していました。
────そのデザイン性重視のアイデアから、現在の断熱性という機能を持った製品へと進化したのですね。特徴的な「多層中空構造」は、どのようにして生まれたのでしょうか?
金沢エンジニアリングシステムズ様: 担当者が趣味で使っていたダブルウォールグラスをヒントに、試しに一層の空間を設けただけの試作品を作ってみたところ、期待したほどの断熱性は得られませんでした。ですが、諦めずにもう一層追加し、二層構造で試作してみると、断熱性が劇的に向上したのです。この時、「層を重ねれば重ねるほど、断熱性能は高まるのではないか」という仮説にたどり着きました。ここから、IKUEタンブラーの核となる多層中空構造のアイデアが生まれました。
この構造の肝は、内部で熱が伝わる経路、いわゆる「熱橋(ねっきょう)」をいかに断ち切るかにあります。各層を支えるリブ(補強部)の位置を意図的にずらし、熱が一直線に伝わらないよう、3Dプリンターならではの緻密な設計が凝らされています。
内部構造を説明するためのカットモデル
────製品化にあたり、特にご苦労された点はありますか?IKUEの特徴は3Dプリント製品として類を見ないその美しい漆仕上げですが、やはり伝統工芸の職人さんとの連携でしょうか。
金沢エンジニアリングシステムズ様: はい。3Dプリンターで出力したままの樹脂では漆のノリが悪く、美しい塗りを実現できません。職人さんからは「この形状では指が奥まで入らず、均一に塗れない」「エッジが立ちすぎていて、塗りが剥がれやすい」といった、製造現場ならではの厳しいフィードバックが次々と寄せられました。私たちは職人ではありませんから、塗りの工程や漆の特性について、一から学びました。職人さんと会話し、試行錯誤を重ね、デザインを何度も変更しました。最終的には、ウレタン塗装と漆塗装を組み合わせた5層の塗装工程を経て、ようやく製品として完成させることができました。
さらに、同社は製造工程で使う「治具」も自ら設計し、Raise3Dで内製しています。漆のノリを良くするための研磨作業を自動化する装置では、強度が必要なアーム部分にはPET-CFを、製品を傷つけずに優しく保持するチャック部分にはTPUをと、材料の特性を的確に使い分けています。
漆塗りの職人の方に渡す前の表面加工治具
効果2:『Waffree』キーボード - 社員の「好き」を製品にする文化
────もう一つの代表的な製品である『Waffree』キーボードも非常に個性的ですが、こちらも何かきっかけがあったのでしょうか?
金沢エンジニアリングシステムズ様: 驚かれるかもしれませんが、この製品はもともと、一人の社員が趣味で製作し、個人で販売まで行っていた自作キーボードがベースになっています。その高い完成度と情熱に会社が注目し、正式な製品として開発・販売するプロジェクトがスタートしたのです。「社員のやりたいこと、得意なことを製品化する」。Waffreeは、その分かりやすい成功事例になりました。これはリクルーティング活動においても非常に大きなアピールポイントになっています。「うちの会社は、個人の"好き"をここまで突き詰められる面白い環境なんだ」と、学生たちに具体的に示すことができますから。
このWaffree開発においても、最終製品となるアルミ削り出し筐体の形状を決定する前の、度重なるプロトタイピングにRaise3Dがフル活用されました。
Waffreeキーボード筐体
効果3:日常業務に溶け込む3Dプリンター - 試作から治具、納品物まで
製品開発以外にも、3Dプリンターの用途は社内の至る所に広がっています。3Dスキャン用の治具や業務で使う小物入れ、顧客への納品物である防水カバー、イベント用の展示物など、多岐にわたる活用をされています。
第四章:未来 - さらなる高みへ。次世代技術との「マッシュアップ」
────最後に、3Dプリンターを活用した今後の展望についてお聞かせいただけますでしょうか。
金沢エンジニアリングシステムズ様: 将来的には、現在主流のFFF(熱溶解積層)方式だけでなく、より高精細な光造形(SLA)や、金属ライクな強度と複雑な内部構造を実現できる粉末造形(SLS)といった、より高度な造形方式にも挑戦していきたいと考えています。一方で、今の積層型プリンターにも、まだまだ多くの可能性があると感じています。
────具体的には、例えば素材の進化などに期待されることはありますか?
金沢エンジニアリングシステムズ様: はい。『IKUEタンブラー』のユーザー様から、「飲み物の中身や残量がわかるようにしてほしい」という具体的なフィードバックをいただいています。もし、ガラスのように透明度の高い樹脂で造形できれば、製品の価値をさらに高めることができます。ぜひメーカーには、そうした新しい素材の開発にも期待したいですね。
金沢エンジニアリングシステムズ様が見据えるのは、単に3Dプリンターを使いこなすだけではありません。彼らが「マッシュアップ」と呼ぶ、3Dプリンティングと他の技術との組み合わせにこそ、真の可能性があると確信しています。それは『IKUEタンブラー』における伝統工芸との融合であり、あるいはソフトウェア開発で培った制御技術との連携かもしれません。
IKUEタンブラーの仕上げ前後特徴的な”目”と漆の効果がよくわかる
ソフトウェア開発で培った論理的な課題解決能力と、社員一人ひとりの自由な発想を尊重する企業文化。そこにRaise3Dという信頼性の高い製造ツールが加わったことで、株式会社金沢エンジニアリングシステムズ様は、これからも社会をあっと言わせるユニークなものづくりで、私たちの未来を豊かにしてくれることでしょう。
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