技術レポート

もう落ちない!フィラメントホルダーの改良

フィラメントホルダーが落ちたことは無いですか?

先日、Raise3D Pro3を使用しているお客様から、「材料交換の際に、フィラメントホルダーを落としてしまうため交換手順で気を付けることはありますか?」と相談がありました。

フィラメントホルダー自体は引掛けているだけのため、フィラメント交換時にホルダーを少し上に上げてしまうと落ちてしまうことがあります。

フィラメント交換時に注意していれば大丈夫ですが、急いでいる時や普段使っていない方がフィラメントの交換作業を行う時に、どうしても落としてしまうことがあるかと思います。

手順などに気を付けることで、落とす回数を減らすことは可能ですが、完全にゼロにするには難しいです。

そこで、3Dプリンターを使ってフィラメントホルダーが落ちないようにするための部品を作成し、使い勝手の向上を図ろうと思います!

データの設計

まず、3Dプリンターで作成するモデルの設計から始めます。

フィラメントホルダーが落ちないようにするためには、フィラメントホルダーを引掛けている穴の上部の隙間を埋めて、フィラメントホルダーが上方に動かなくすることが必要です。

隙間を埋めたい場所ホルダーの上端部とホルダー入口の上端の隙間をデジタルノギスで測定し、その隙間に合う治具をCADで設計しました。

使用する材料によって収縮率が異なるため、これも考慮して設計する必要があります。本記事のSTLは0.18 mmのクリアランスで設計しています。

造形と確認

では、先ほど設計したデータを実際に造形していこうと思います。
今回使用した機種とフィラメントは下記の通りです。

TPU 95A」を使用した理由ですが、TPU95AはPLAと比べゴムのように柔軟性があります。

今回作成する物は、フィラメントホルダーが落下しないように隙間を埋めるのはもちろんですが、ストッパー自体が振動や衝撃で簡単に外れてしまっては意味がありません。

そのため、柔軟性のある材料で作成することで、しっかりとホールドさせてストッパー自体が落ちないようにしました。PLAフィラメントでも造形可能ですが、少し外れやすくなることがあるため、両面テープなどで固定してあげる必要があります。

先ほど作成した3Dデータをideamakerにインポートしスライスをしていきます。
今回は、積層ピッチはそこまで重要では無いので「標準テンプレート」を使用し造形をしていきます。

スライスをした結果は下記の通りです。

  • 材料使用量:4.2グラム
  • 造形時間:17分

スライスデータの詳細

それでは実際に造形を行い、フィラメントホルダーを抑えることができるか確認してみましょう。
出来上がった治具を隙間にはめてみたところ、隙間にぴったり合わず、少しガタついていました。
改善策として、クリアランスを 0.18 mm から 0.1 mm に変更して造形し直しました。

これにより、治具がしっかりと固定され、狙い通りのフィット感を得ることができました。

TPU 95Aでフィラメントホルダー押さえ治具の造形

造形した押さえ治具

フィラメントホルダーを本体に取り付けた状態で、作成したストッパーを隙間に差し込んで押し込むことで、フィラメントホルダーを固定できます。

ホルダー自体を上下させてもフィラメントホルダーは外れません!

今回は、TPU95Aフィラメントで作成しましたがPLAフィラメントなどでも造形可能です。
TPU95Aフィラメントをお持ちの方も、そうでない方も、下記リンクよりデータをダウンロードできますのでぜひ作成してみてください。

本事例で作成した固定具のモデルデータダウンロードはこちら 

今回は、Raise3D Pro3での小さい悩みを解決する物を作成しましたが、業務で扱っている機械や道具などで、このような小さい悩みがあるかと思います。

もし3Dプリンターをお持ちであれば、このように日頃の小さな不便さを解消してみてはいかがでしょうか?

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