
FFF方式の造形ではピン角が出せない?

FFF(Fused Filament Fabrication)方式の3Dプリンターでは、形状によって再現が不可能な形状がいくつか存在します。今回はピン角の造形について解説します。
まず初めにFFF方式の3DプリンターのXYZの方向を正しく理解しましょう。
図1に示すように、一般的にプラットフォーム(プリントベッド)に対して水平方向がX軸およびY軸、垂直方向がZ軸として定義されます。
X軸はプリンターヘッドが左右に動く方向、Y軸は前後に動く方向、Z軸は積層される高さ方向を示します。
このXYZ方向を正しく把握しておくことで、各形状における造形条件や再現性に関する課題を、より論理的に理解することが可能になります。
図1:3DプリンターのXYZ軸説明図
では、ピン角が再現できない状態とはどのようなものでしょうか。
それは、X方向とY方向の動きで作られる形状の場合です。たとえば、机の上の紙にペンで角のある形を描くイメージと同じです。
なぜこのような場合にピン角が再現できないのでしょうか。
それは「ノズルの穴形状」に起因します。溶けたフィラメントはノズルの先端から押し出されますが、その穴の形は「丸(〇)」であるため、角の再現が難しくなります。
吐出されたフィラメントが具体的にどのようになるのか、図2で表しました。
吐出されたフィラメントが直角に動いた場合、内側の角は直線と直線がぶつかって角ができますが、外側の角は直線と曲線がつながり、角が丸くなってしまいます。
つまり、最小でもノズル径の半径分だけ丸みがついてしまい、外側の角は直角に造形することができません。
図2:角部のノズルの動きと出力形状
この丸みは非常に微細なので気にならない程度ではありますが、もし角でなければならない形状を造形する場合は注意が必要です。
対策としては、角部に削り代を持たせ、造形後に切り取ったり研磨などで角を出す方法があります。さらに、ノズル径を小さくすることで、より角のように見える造形が可能となり、再現性を高めることができます。また、ノズル径>積層ピッチの関係からXY方向でなくXZ方向またはYZ方向で造形すれば積層ピッチの半径分の丸みで造形することができ、XY方向よりもシャープな形状を出せるようになりますので、造形方向を変えることも一つの手段です。
3Dプリンターの構造上の制約により、どうしても造形が難しい形状や不可能な形状があります。データ作成やスライス処理を行う際には十分注意し、モデルの配置方向を調整してみたり、造形可能な形状となるように設計を変更してみてはいかがでしょうか?