技術レポート

水溶性サポート材の特性と効果的な除去方法

目次

3Dプリンターで複雑な形状を造形する際、オーバーハング部や中空構造を支えるためにサポート材は不可欠です。特に水溶性サポート材は、造形後の除去が容易であるため、複雑な内部構造を持つ部品や繊細な部品の造形に適しています。しかし、その特性を理解せずに扱うと、除去に時間がかかったり、造形物に悪影響を与えたりする可能性があります。本レポートでは、水溶性サポート材の特性と、それを効果的に除去するための方法について詳しく解説します。

水溶性サポート材の特性

水溶性サポート材は主にPVA (ポリビニルアルコール) ベースのフィラメントのことを差しFFF方式のサポート専用フィラメントとしてはポピュラーな存在です。

水道水などで満たされた容器に本フィラメントをサポート材としたモデルを投入することで自然と溶融し除去作業が容易になります。

  • 特性: 冷水から温水まで幅広い温度で溶解します。

  • 注意点: 吸湿性が非常に高いため、保管には十分な注意が必要です。湿気を吸うと造形品質が低下したり、ノズル詰まりの原因になったりします。

効果的な除去方法

1. 水への浸漬

最も基本的な除去方法です。造形物を水に完全に浸し、サポート材が溶けるのを待ちます。
使用する容器は水が多く入るものが望ましく、バケツやタライなどがお勧めです。

造形物を水に投入した直後は水面に浮遊していますが、時間経過とともに沈んできますのでそのままで問題ありません。
使用する水は水道水で問題ありません。一般的には温水の方が溶解速度が速まりますが、造形物の材質によっては高温で変形する可能性があるため、注意が必要です。

モデルを約24時間浸した状態のバケツです。
水が濁ってきたら、新しい水に交換することで溶解速度が向上します。

水を定期的に攪拌したり、超音波洗浄機を使用したりすることでサポート材の溶解は促進されます。

十分な時間モデルを浸しても水が浸透しにくい奥まった形状や細い隙間に発生したサポートは十分に溶けないことが多くあります。
その場合は工具などを使い、手作業での除去が必要になるケースがあります。

溶け残っているサポート材は柔らかいゲル状になっており、ブラシやピンセットを使うことで簡単に取り除くことができます。またこの作業を行った後に再度綺麗な水に浸すことで溶解を促進させることが可能です。

2. 超音波洗浄機の利用

超音波洗浄機を用いた除去も有効な手段です。

超音波洗浄機を使用すると、水流だけでは届きにくい複雑な内部構造のサポート材も効果的に除去できます。

設定: 超音波洗浄機の取扱説明書に従い、適切な時間とモードを設定してください。
30分を目安に洗浄機を作動させ、水温を確認しながらサポートの落ち具合をチェックしましょう。

注意点: 洗浄機のスペックまたは造形物の形状によっては、超音波の振動によって破損する可能性があるため、事前にテストを行うことをお勧めします。

超音波洗浄機は振動によって熱が発生する為、長時間使用すると水温が上昇し熱に弱いPLAは変形してしまうおそれがあります。夜間の長時間稼働などは避けましょう。

除去後の処理

サポート材の除去後も、いくつかの処理を行うことで造形物の品質を向上させることができます。

  1. 洗浄: 溶解液やサポート材の残留物が造形物の表面に残らないように、きれいな水で十分に洗浄します。

  2. 乾燥: 造形物の内部に水分が残ると、後の工程に影響を与える可能性があるため、完全に乾燥させます。自然乾燥のほか、温風や乾燥機を使用することも効果的です。

家庭にある食器乾燥機やRaise3D DF Cureでも乾燥処理を行う事が可能です。

水溶性サポート材使用時の注意点

  • 保管: PVAなどの水溶性サポート材は吸湿性が高いため、使用しないときは密閉容器に入れ、乾燥剤と一緒に保管してください。

  • 乾燥:万が一、PVAが吸湿してしまった場合は、60℃で4~16時間置くことで乾燥させることができます。

  • ノズル設定: サポート材と造形材の間の層の接着強度、ノズル温度、リトラクション設定などを適切に調整することで、サポート材が造形物に固着しすぎたり、逆に剥がれやすすぎたりする問題を避けることができます。

  • 排出水の処理: 水溶性サポート材を溶解した水は、環境に配慮して適切に処理してください。下水に流せるかどうかの確認や、必要に応じて専門業者への依頼を検討してください。

まとめ

水溶性サポート材は、3Dプリントにおける複雑な形状の造形を可能にする強力なツールです。その特性を理解し、適切な方法で除去することで、造形後の手間を大幅に削減し、高品質な最終製品を得ることができます。本ドキュメントで解説した内容を参考に、水溶性サポート材を効果的に活用してください。

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