技術レポート

3Dプリンターの反り・剥がれの実践的対策


3Dプリントにおいて、最も頻繁に遭遇するトラブルの一つが造形物の反りとプラットフォームからの剥がれです。今回はなぜ反りが発生するのか、Pro3 HSE3などの現行Raise3Dシリーズで実践すべき具体的な対策をご紹介します。

1. なぜ造形物は反るのか? 

反りの正体は、樹脂が冷却される際に発生する熱収縮による内部応力です。

①熱膨張と収縮: ノズルから吐出された直後の樹脂は高温で膨張していますが、冷却される過程で体積が収縮します。

②収縮の差: 下の層はすでにプレートに固定されていますが、新しく積層された上の層が収縮しようとすると、下の層を内側に引きずり込もうとする力が働きます。

③剥離: この引っ張る力がプラットフォームへの密着力を上回ったとき、角の部分からめくれ上がるように剥がれてしまいます。

プラットフォームから剥がれ角部が浮き上がったことによりノズルと接触し造形が乱れています。

反りを助長する要因

  • 底面積の大きさ: 底面積が広いモデルほど、収縮によって発生するトータルの引っ張り力が強くなり、端部にかかる負荷が増大します。

  • 高い充填率:充填率を高く設定しすぎると、内部の樹脂量が増えるため、その分収縮する力も強固になります。強度を求めて充填率を上げることが、皮肉にも反りを引き起こす原因となるのです。

充填率20%

充填率60%

2. 徹底対策:反りを防ぐステップ

① 基本中の基本:オフセットキャリブレーション

まず、どれだけ他の項目を煮詰めても、ノズルとプレートの距離が適正でなければ定着しません。

  • 高さ調整: ユーティリティメニューからオフセットキャリブレーションを行い、第一層がプレートにわずかに押し潰され、しっかりと密着する適切な高さに調整してください。(キャリブレーション方法については各機種の取扱説明書をご参照ください。)

② PEIシートの清掃(無水エタノール)

現行のRaise3Dシリーズは、定着性に優れたPEIシートを標準採用しています。
手の脂や前回の樹脂カスは定着を妨げるおそれがあります。

無水エタノールを染み込ませたワイプで表面を丁寧に拭き上げ、脱脂を行ってください。
※必ず機械から取り外した状態で清掃してください。

③ 3Dプリンター用のり(Magigooなど)の活用

Magigoo

大型造形や収縮の影響が大きく造形が難しい樹脂材料(ABS・PA・PC等)には、Magigooなどの3Dプリンター用のりを造形物範囲全体に1~2層塗っていただくことが効果的です。

熱いときは強力に張り付き、冷めると自然に剥がれる特性を持ち、PEIシートの破損を防ぐ保護層としても機能します。

④ 造形位置はプラットフォーム中央に

モデルを配置する際は、プラットフォームの中央部分を選ぶようにしてください。
理由: ヒートベッドの温度は、構造上、中央部が最も安定しており、端にいくほど温度が下がりやすくなります。
最も温度が安定する中央部で造形することが、反りリスクを減らす単純ながら効果的な方法です。

⑤ブリム周数の変更と設置面積の確保

第一層の接地面積を物理的に増やすことで、剥がれを抑制します。

設定方法: ideaMakerの詳細設定→ プラットフォームの追加→ブリムのみを選択します。

  • ブリムの周数: 通常設定のブリム周数で剥がれてしまう場合は、10周程度に増やすことで接地面積を拡大し、角の浮き上がりを防止します。

ブリム5周

ブリム10周

⑥プレート温度の調整(ideaMakerでの設定)

プラットフォームの密着力を高めるため、プレート温度を標準設定値よりも5℃程上げていただくことも有効な手段です。

設定方法: ideaMakerの詳細設定>温度>プラットフォームの温度より変更してください。
 ※設定時の注意点: 必ずideaMaker側で変更してください。本体装置側で操作しても、ideaMakerの設定内容が「正」として上書きされるため、設定が無効になってしまいます。

⑦ 設置環境の温度管理と予熱

樹脂の収縮を防ぐには、庫内および周囲の温度を一定に保つことが不可欠です。
業務時間外の温度低下に注意: 日中は空調が効いていても、夜間や休日など業務時間外に空調が切れると、室温の低下に伴い庫内温度も下がり、反りが発生しやすくなります。 
長時間造形を行う際は、設置場所の温度変化も考慮する必要があります。

まとめ:安定した造形のために

反りの対策は、正しいオフセット調整、中央への配置、無水エタノールでの清掃、3Dプリンター用のりによる定着強化、そしてideaMakerでの設定見直しと環境温度の維持の組み合わせが重要です。

一見難しく感じるかもしれませんが、こうした一つひとつの丁寧な準備が、最終的な造形クオリティに大きな差を生みます。

基本を押さえれば、Raise3Dのポテンシャルを最大限に引き出し、難易度の高い大型造形も自信を持って進められるようになります。

完璧な定着を実現し、ストレスのない素晴らしい3Dプリントライフを楽しみましょう!

 

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