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材料コラム

高速造形と実用安定性を両立する次世代マテリアル Raise3D HyperSpeed PLA Pro

高速造形と実用安定性を両立する次世代マテリアル Raise3D HyperSpeed PLA Pro

Raise3D HyperSpeed PLA Proとは?

Raise3D Hyper Speed PLA Proは、Raise3Dの「Hyper FFF®(高速FFF方式)」テクノロジーに特化して特別に設計された複合フィラメントです。通常のPLAフィラメントとは異なり、カーボンパウダーやその他の特殊な添加剤が配合されているのが最大の特徴です。

この独自の配合により、プリントされた造形物の表面は積層痕が目立ちにくいマット(つや消し)仕上げとなります。さらに、スライサーソフトに搭載されているアイロニング機能(ノズルで表面をなぞって平滑化する機能)を併用することで、表面の滑らかさを向上させることが可能です。

カラーバリエーションは実用的なダークトーンを中心に、ブラック、ダークブルー、ブリックレッド、ダークグリーンの4色が展開されています。注意点として、本製品はカーボンパウダーを含むため標準搭載の真鍮製ノズルを摩耗させやすい性質があります。そのため、印刷の際はSiCノズルなど硬化鋼(Hardened steel)以上の耐摩耗性ノズルを使用することが強く推奨されています。

従来のPLAとの違いとメリット

PLA(ポリ乳酸)は、その印刷のしやすさから3Dプリントにおいて最も一般的に使用される材料ですが、「衝撃に弱く割れやすい」「耐熱性が低い」といった弱点がありました。

Raise3D Hyper Speed PLA Proは、このPLAの弱点が改善されています。従来のPremium PLAと比較した場合、層間密着性こそわずかに劣るものの、剛性、引張強度、そして耐衝撃性の面でPremium PLAを上回る優れたパフォーマンスを発揮します。

特筆すべきはその低収縮性と耐衝撃性です。

元々3Dプリントフィラメントの中では最も収縮率の低いバリエーションで有名なPLAですが、0.1~0.3%の収縮率であっても300㎣を超える大型モデルの造形時には1㎜以上の収縮によるズレと反りのリスクが上昇していきます。
 しかしRaise3D Hyper Speed PLA ProはPLAに微細のカーボンパウダーを含有することで通常のPLAよりもさらに収縮を抑えて造形安定性と寸法安定性を確保しています。

次に耐衝撃性ではアイゾット衝撃試験(またはシャルピー衝撃試験)において、通常のPLAが2.7kJ/m2と脆性破壊を起こしやすいのに対し、PLA Proは15.5kJ/m2の粘り強さを持ち合わせています。これにより、単なる形状確認用のモックアップに留まらず、実際に力が加わる治具や、落下リスクのある外装部品としても十分に使用可能な実用性を獲得しています。

また、高速プリントへの最適化も見逃せません。一般的なフィラメントで高速プリントを行うと、ポリマーが熱ブロック内で十分に溶融する時間がなくなり、ノズル詰まりや層間接着の不良を引き起こします。しかし、Hyper Speedシリーズは分子量の最適化と流動性の調整が行われていることで300mm/sの高速造形を実現しています。

類似フィラメントとの物性値比較

ここで、Raise3D Hyper Speed PLA Proの機械的特性を客観的に把握するため、近しいPLA系フィラメント(Raise3D Premium PLA、Raise3D Hyper Speed PLA、およびForward AMのUltrafuse PLA PRO1)との主要な物性値の比較を行いました。

特性 / フィラメント名

Raise3D
Hyper Speed PLA Pro

Raise3D Premium PLA

Raise3D
Hyper Speed PLA

Forward AM
 
Ultrafuse PLA PRO1

 

密度 (g/cm3)

1.21

1.2

1.21

1.25

ヤング率 / 剛性 (MPa)

3100

2636

2600

3166

引張強度 (MPa)

37.5

46.6

59

48.0

曲げ強度 (MPa)

68.5

85.1

81

92.4

シャルピー衝撃強度 (kJ/m2)

15.5

2.7

4.3

20.4

HDT (荷重たわみ温度)

@0.45MPa (°C)

60.0

- (Tg 61)

53

- (Tg 63.0)

※上記の数値はXY軸(Flat)方向のTypical Value(代表値)です。印刷条件により変動する場合があります。また、Premium PLAおよびUltrafuse PLA PRO1はHDT(荷重たわみ温度)のデータ記載がないため、参考値としてガラス転移温度(Tg)を括弧内に記載しています。

表から読み取れる通り、Hyper Speed PLA Proはヤング率(3100 MPa)が高く、非常に高い剛性を持っています。また、特筆すべきはシャルピー衝撃強度(15.5 kJ/m2)であり、Premium PLA(2.7 kJ/m2)や通常のHyper Speed PLA(4.3 kJ/m2)と比較して圧倒的に高い耐衝撃性を誇ります。

熱特性(HDT)についてはABSの様な100℃に迫る程の耐熱性は獲得できていませんが、Hyper Speed PLA Proは0.45MPa環境下で60.0℃の荷重たわみ温度を持っており、通常のHyper Speed PLA(53℃)よりも優れた耐熱性を示しています。これは一般的なPLAとしては良好な水準であり、日常的な環境や軽度の温度負荷がかかる用途においても安定したパフォーマンスが期待できます。

Ultrafuse PLA PRO1はABSを凌駕する強度を持つタフPLAとして知られており、引張強度や衝撃強度で非常に高い数値を示しています。
 シャルピー衝撃強度は20.4 kJ/m
2Hyper Speed PLA Proを上回る物性となりますが、高い衝撃耐性と剛性を持ちながら、カーボンパウダーによる上質なマット仕上げを実現している点で非常にユニークで価値の高いポジションを確立しています。

お勧めのアプリケーション

以上の特性から、Raise3D Hyper Speed PLA Proは以下のようなアプリケーションに強くお勧めできます。

  • 金型不要の小ロット外装部品の迅速な製造: 高い剛性と耐衝撃性、そしてカーボンパウダー添加による美しいマット仕上げにより、後加工(研磨や塗装)を行わなくても、そのまま最終製品の筐体や外装パーツとして使用できます。
  • 大型造形:PLAでも反りや収縮の影響を受けるワークサイズ300㎟を超える大型造形時でも安定した造形と寸法安定性を維持することが出来ます。
  • 治具・工具の造形: 工場内の組立治具など、ある程度の衝撃や応力が加わる部品において、従来のPLAでは割れてしまうようなシーンでも、PLA Proの粘り強さが活かされます。
  • 意匠性の高いコンセプチュアルモデル: 光の反射を抑えるマットな質感が、モデルのディテールを美しく際立たせるため、デザインレビュー用のモックアップにも非常に適しています。アイロニング機能と組み合わせることで、さらに上質な仕上がりになります。

Raise3D Hyper Speed PLA Proは、プリント速度、強度、そして美しい外観という、現代の3Dプリントに求められる3つの要素を高次元で融合させたフィラメントです。日々の試作から最終部品の小ロット生産まで、幅広いニーズに力強く応えてくれる革新的なマテリアルと言えるでしょう。

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