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技術レポート

穴形状の内側への「引っ張り」を防ぎ、綺麗な円形を再現する為の薄壁モデリング術

穴形状の内側への「引っ張り」を防ぎ、綺麗な円形を再現する為の薄壁モデリング術


FFF(熱溶解積層)方式の3Dプリンターで、押さえ治具などの「造形途中から穴が生じる形状」を造形した際、円の輪郭がガタガタになったり、内側に歪んだりした経験はありませんか?

この現象の原因は、樹脂をノズルから吐出する方式ゆえの「土台の欠如」にあります。通常、樹脂は下の層に密着することで定着しますが、サポートに接するモデルの面は、剥離しやすくするために1〜2層分の空隙(隙間)が設けられます。

いわばサポートに接している面は全て「僅かに空中に樹脂を吐き出している」状態のため、ノズルが円を描こうと動く際、樹脂が土台にしっかり定着せず、ノズルの動きに引きずられて円の内側へとショートカットしてしまうのです。


  

「紐と棒」で考える、内側に引っ張られるメカニズム

この現象は、棒に結んだ紐をイメージすると簡単に理解できます。

  • 棒(ノズル)で円を描いたとき、棒自体は正確な円をたどります。

  • しかし、先に結ばれた紐(吐出された樹脂)は、常に中心方向に引っ張られ、円の内側に軌跡を描きます。

これが3Dプリントで起こる「内側への引っ張り」の正体です。特に球体の上半分など、下の層とのズレ(XY差)が大きい形状では、この影響が顕著に現れ、円形を綺麗に再現することが困難になります。

スライサーの「高密度サポート」設定も有効な手段の一つですが、サポートが剥がれにくくなったり、造形時間が延びたりと、全てのケースで万能というわけではありません。

解決策:3Dプリント用にデータをリファインするDfAM

そこで提案したいのが、モデリング段階で「穴の輪郭を薄肉で下まで延長する」か「円の低下面で面取り追加」というDfAM術を用いたアプローチです。

DfAMとはDesign for Additive Manufacturingの略称であり、既存モデルの機能性を維持しつつ3Dプリント向けに形状再現性を高める3Dデータ修正のCAD技術です。

装のステップ

  1. 薄肉の円筒を追加: 空中に浮いている穴の輪郭に合わせ、プラットフォームまで届く厚さ1枚分(外壁1周分:0.4mmノズルを使用している場合は0.4mmの肉厚)の薄い壁をCADで作成します。
  2. そのままプリント: この「煙突」のような形状を含めてプリントします。この薄い壁が完璧な「土台」となり、ノズルの動きに負けずに樹脂を定着させます。

  3. 仕上げのひと手間: 造形後、モデリングで追加した円筒部分をニッパーやペンチで折り取るか、カッターで切除します。壁1枚分なので、驚くほど簡単に取り除くことができます。

面取り追加の場合:

設計段階で下面に面取りを追加することで、面取りした箇所にサポート材を使用することなく安定した積層を実現できます。 その結果、内側へのショートカットや垂れの発生を抑え、設計値に近い綺麗な円形を再現できます。  

通常のサポートの上に作った穴と、この「DfAM技術」の上に作った穴を比較してみてください。断面の円形状の美しさは一目瞭然のはずです。

「3Dプリンター向けの設計」が確実な形状再現を生む

FFF方式プリンターにおいて、精度の高い穴を作りたい場合は「穴をZ軸(垂直方向)に向ける」のが定石です。しかし、どうしても空中に穴を配置しなければならない場面もあります。

そんな時、今回のような「ほんの少しの工夫」を設計に加えるだけで、嵌め合い部品もすんなりと収まる高精度な造形が可能になります。

「3Dプリンターの特性を理解し、それに合わせた設計(DfAM)を行うこと」こそが、造形クオリティを劇的に引き上げる近道です。ぜひ、お手持ちのデータでこの「薄壁延長」を試し、その効果を実感してください!

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